マルチトニックシステム。
おそらく僕が作曲要素の中で最も好むテクニックではないかと思う。24歳、某ジャズスクールでジャズピアノと理論を2年間に渡って習ったが、その中でこれほど面白く感じた理論はない。それから長い年月を経過しても僕の中では色あせることなくこの意外に簡単であり、しかしながら底なし沼のようなテクニックもないと思う。誰しもが小学校、中学校の音楽の授業で主要三和音ってのを耳にしたことがあるはず。その主要和音の更に中心にあるのをトニックという。ドミソ、ドファラ、シレソ。この「ドミソの和音」コードネームで言うところの「C」。これををトニックと言う。要はそのキー(調)を決定付ける和音とも言える。キーを決定する音は何もこのトニックだけではないが、実際に音楽をスタートさせ終わらせるところにコレが配されて聴き手は安心するのである。安心させたくない場合は、トニックではくて、ドファラ(コードで言うところのF)をケーデンス(終止形)に持って来れば良い。ジャズスクールの特待生選抜の試験にて僕は正解は分かっていたが、最後に来るコードとしてどうしてもE♭m7が書きたくなって括弧の中にこのコードを記入した。つまりサブドミナント(正確にはサブドミナントマイナー)で終わらせたのだ。key=B♭と言うことで。後日ギタリストである先生に呼ばれて「このコード、どうして?」と聞かれたので正解を告げたら「そうだね、では何故にこれを解答したの?」と聞かれたので、自分が作曲家としてそのように終止させたかったからとえらくカッコつけて言ったが実はバカなことをした!と後悔したものだ。特待生になれなかったら親の援助打ち切りという約束があったのに、そんな些細な優越感で、、と。しかしながら先生はいい人でした(笑)ドイツ人みたいに誤りは誤りとデジタル調に考えられたら後悔が大きかったに違いない。
と脱線したところで、この理論で最後に習ったのがマルチトニックシステムだ。つまりコードの性質上ドミソという中心を自分なりのルールにおいて連鎖させる特殊技法である。 そのコードとコードに普通のコードプログレッションにあるような有機的な性格はない。
例)
EM7→CM7→AM7→FM7
このようにメジャーを共通としたトニックだけのコードプログレッション。ルートを三度で進行させて更に音楽的な意味合いを持たせている。勿論これをマイナーコードや、テンションをぎっしり入れた変態マルチトニックも考えられる。
そしてとんでもないサーカス芸が必要になるが、このトニック一つ一つにドミナントモーションをくっ付けると言う暴力的な技も考えられる。つまり、、、
例)
(B7)EM7→(G7)CM7→(E7)AM7→(C7)FM7
と括弧の中はその先のトニックのドミナント(シレソ)だが、これを素早く弾くのである。すると途轍もないテンション感とあまり聴きなれない結果となる。 これには条件があり重ねて言うけれど聴き手がボンヤリしているうちに先に言ってしまう程度のスピードで演奏しなければならない上にベースやギター等他楽器との綿密な打ち合わせは必要だろうと思う。 そう言うことで僕のオリジナルにもこのテクニックは諄いくらいに出現する。聴いていて「あれ?何、今の」と言うような腑に落ちないような、しかし音としてはあっているような、しかしどうも解せないような、、笑
そう言う時、僕はこう言うことをやっている可能性が高いです。こう言うことを知って聴くと音楽はより楽しくなるかも知れない。イメージ表現が何より大切でしょ?と言われそうだけれど、こう言うテクニックが集められて何とか言葉に出来ないイメージに近づけている側面はきっとあるかと思います。
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