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タカ「新聞記者」を観る

まず、最初に受けたのが驚き、この映画が世に出た!と。勿論、その内容から。映画の元となるのは、東京新聞・新聞記者である望月衣塑子の同名著作の原案となる。この名前だけで強いアレルギーで受付けない、最初から作品に触れない人も少なからず居ると思う。私はこの作品を5月の連休中「シンゴジラ」と共に借りて来て続け様に観たわけだが、共通するのは映画であることだけであとは全く次元の異なる作品です。監督は藤井道人、主演は松坂桃李とシム・ウンギョンですが、この二人はとてもこの世界に同化しており、そのリアルな感触は私にとって特筆すべきものでした。

この映画は数年前、会社の同僚が「これ絶対見た方がイイ!!」って連呼していたのを記憶していたから。借りるビデオリストに入っていたということです。

「内調」という組織とそこに真実を炙り出そうと言う奮闘する女性記者、その間で揺れる国側の人間の息苦しくなるような葛藤を描いている。

田中哲治扮する室長が何とも言えないワルぶりだが、葬式の後無遠慮に押しかける記者連中や、主人公(松坂桃李)にやたらと「それで良いのですか」を連発して圧をかける女性記者(シム・ウンギョン)が重なって見えてくる。

人に対する気持ちが、仕事に対する忠誠心みたいなものから喪失しているのはどちらも同じ。

また、この映画を近視眼的にみるのではなく、内調という組織が一体どういう経緯で生まれたものなのか、その目的と内容を自分なりに知ることが大切かも知れない。映画からは勧善懲悪的に、一方的に内調が悪代官みたいな役割に祭り上げられているが、それをそのまま受け止めてはどうなのかな?という疑問があり、先ほど少し調べてみました。そして、この組織は間違いなく必要ということ。但し、その在り方、市民に対峙するにあたっての何かしら深い考察、深化が必要ではないか?というのが自分の考えです。

今のままで良いということはない。新聞記者の役割は思いの外大きいのだと思うし、それにしては心許ない印象です。

さて、この映画はストーリー自体が重く、非常に特徴的なのですが、私が強く思うのが本作が、映画作品として突出した力を持っていること。それは絵の一つ一つと取っても無駄がなく、アングル・スピード感を持っている。全体に共通して漂う空気感、独特な温度感、色調、どれもこれもが作品の要素として支え切っている。映画自体の出来が振るわねければ、内容に大きなインパクトがあるだけに、やけに鼻につくような受け止め難い結果になったように思う。その点がこの監督・藤井道人の凄いところ。最後に音楽です。

この音楽は、岩代太郎さんですが、完全に映画に寄り添っており、俳優陣と共に高いレベルで同化しております。旋律、サウンドは重く美しく、重層的な世界。劇中で表出するフレットレスベースのラインと質感も作品のスピードに趣を与えているように感じ、とても気持ちが良かった。

しばらくはこの監督さんから目が離せない自分です。

▷新聞記者・音楽 https://www.youtube.com/watch?v=juD0xm61yg0

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