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KTGアルバム発表!

このページでは遂に発表されるKTGアルバムのライナーノーツを先んじて発表します。作品それぞれの概要と言葉の説明を追加。少しマニアックな興味深い内容になります。

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KTG / TV tower in Winter

真冬のTV塔
13拍子+モードDリディアン7を使う第一テーマ、目紛しく転調する第二テーマを柱とする。13拍子は分割することを回避し一括りのイメージで演奏される。
曲全体の丁度「臍」にあたる中間にインプロビゼーションを配置。茫洋とした世界へと聴き手を誘う。ドラムソロパートを挟んで第二テーマに回帰しコーダに接続する。
TV塔は釜石三山のひとつ「箱根山」の頂に在るTV塔がモティーフ。特長的なタイトルだが、この曲には心に刻まれた素描が混在している。例えば、毛糸の手袋に付いた雪の結晶から、製鉄所と山々の稜線が織り成すコントラスト、情景だけではなく家族の姿、子供達の暖かくも冷たい世界まで。

Signs
KTGならではの作品。アルバム中最も現代的な方向に振った内容。3パートから成る。
パート・1:調性から意識的に逸脱、敢えて脈絡のない白紙にポタポタと絵の具を零して行ったような風合いとし多分に実験的なアプローチとなる。
パート・2:一転して厳密なコードプログレッションとベースソロを中心とする。敢えてはっきりとしたケーデンスを排し、ピアノソロに音楽を明け渡す。ピアノソロが無音となったところで、曲を閉じる。
パート・3:無音の状態から唐突に4度進行のユニゾンで加速して行く。軽快でテクニカルな躍動的作品。ポイントは中盤で現れる行進曲風のパート。ピアノは右手「規則的な刻み」・左手「コードワーク」が異なった世界を演出するので脳を二手に分ける必要がある。最後コーダでは更にスピードを上げて、明るくスケールの大きなフィナーレとなる。

Kenta and Fireworks
白血病でこの世を去った少年へ捧げられた作品。最後までパワー全開で駆け抜けた彼の人生に対する驚きと尊敬の念が作品の底流となります。
この作品はAメージャー基調となるが、この調性はとても大きなポイント。A(イ長調)というサウンド(響き)がなければこの作品は生まれなかったように思う。ピアノに向かい、音を発する直前「A」を意識したのは、私の場合稀なこと。何の前触れもなかった。アルバム収録作品。

Spiral
ベースレストリオ・FLAT122オリジナル。規模の大きな作品は3パートから成立。複雑な展開部を含むテーマ、途中に挿入されたミニマルミュージックパート、異なる形で提示されるテーマ+エンディング。
数多くのバージョンが存在するが、KTGではクラリネットがフロントということから趣を大きく変えており、涼やかな流れを感じさせるもの。
テーマは三拍子系、ミニマルパートは殆どが変拍子中心となる。この連鎖する変拍子は盟友のギタリスト・平田聡がリハーサル後に書き殴って私に渡したものが基本になる。私は「これを作品のどこかに使うもの」と勘違いし拍子に従って作曲、中間の挿入曲として使用、ということになる。つまり、このミニマルパートは私と平田の共作と言って良いのかも知れない。

言葉の説明
モード:リディアン(7)
モードは、マイルス・デイヴィスが提唱した既成の音楽に対する新しい規範となる演奏・作曲理論。一般にスケールと捉える場合が多いが、一つのコード(和音)であってもそれをモードと認識することは可能。モードはそのスケールに必ず特性音を持つ。
例:Cリディアンの特性音=F# 、A♭リディアンの特性音=D

インプロビゼーション
即興の事。即興は何もない白紙の状態から音を起こしていくタイプと、予め方向を定めるものとがある。方向とは、意外に多くの選択肢、要素がある。
例えば、どのプレーヤーから音を発出するのか?から、使用するコード、もしくはモードを決めておく。更に設計を密にすると、音の出し方、強弱のルール、テンポと進め方(時間)のルール、そして最もなインパクトは、演奏を止めることである。音楽において音を出さなければならないというのはプレーヤーが陥りがちな強迫観念であり、音を出さないということが状況によっては最良である場合は(自戒を込めて言えば)多々ある。

イメージ
私が作曲する上で基本とするもの。しかし、イメージがどのように音に結び付くのかは分からない。また、それは分からないままで良いのかも知れない。見聞きしたものが一旦脳に入り、自前のフィルターによって別なものに作り変えてアウトプットで少し曲がったものとして創出される。
イメージ表現だからと言って、例えば自然を科学的に解明し、その要素を一つ一つ音に置き換えて限りなく「雨」「風」「水」「霧」等に近づけることよりも、作曲者が適当にどこかで曲げてしまったものの方が面白いに違いない。違うだろうか?

ミニマルミュージック
シンプルかつコンパクトなフレーズを反復させ音楽を進行させる。また、楽器の出し入れ(オン/オフ)と組み合わせにより変化させるところもミニマルの特長。代表的な作曲家にスティーブ・ライヒ、フィリップ・グラス、ティリー・ライリー、マイケル・ナイマン等。ミニマルを現代音楽と捉えるか?は賛否が分かれる。他方ミニマルはCMや映画とは相性が良く、至る所でセンスとして使われるのでミニマルを言葉として知らなくても無意識のうちに耳に入っている可能性はある。先頃、フィギュアスケートのネイサン・チェンがフィリップ・グラスをBGMとして演技したのは記憶に新しい。

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