私のプチ城です。音楽雑誌に出てくるようなキレイでカッコいいスタジオではないですが、私が一年を通して最も多くの時間を過ごすなくてはならない場所。 目を閉じて過去の忘れていた時間を探すのも、この場所。それと意外に地下鉄の車内がそうか。私が先ほど思いを馳せていたのは、体を壊して実家に帰省していた3ヶ月間のことだ。この3ヶ月、私はどこにも身を置くことがなくただ病院に通い、父母と一緒に暮らしていただけだった。食べられなくて痩せていたので動くのもキツく2階の自室に布団を敷いてもらって明るいうちから横になり、窓から見える雲の流れを追っていた。病院帰り気力を振り絞ってレコード店に寄り、買って来たのが佐藤允彦さんのバンド、メディカルシュガーバンクのセカンドアルバムだった。このアルバムは胃腸をやられていた私には、一種の清涼剤だった。この人生の中でスッポリと抜け落ちたように存在する3ヶ月間。その後私は上京してジャズスクールに入ったのだが、そこには既に学校のカタログにデカデカと載っていた佐藤さんは、既に他校を創設されており、いらっしゃらなかった!その学校カタログは、ちょっと詐欺だろうよ!?と思うが、今は思い出の一部に収まっている。結果としてそこでピアノを板橋文夫さんに、理論を井上博さんに教えられたのは今も自分の財産となっているし、ここで学ばなければ私の作品力は得られなかったように思う。というかもっと別なものになっていたのかも知れない。 東京に戻る前日、私は実家近くの海外に自転車で向かい、夏の終わった初秋の防波堤に腰を下ろして波の音を聴いていた。目を閉じてしばらく耳を欹てていると波の音に微かに交じって遠い河口付近で護岸工事する重機の音が伝わってくる。その、波と重機の音のコントラストに不思議な感覚が沸いものだ。 これが条件反射となり、今も目を閉じると時折この波と重機の音、そして自分の姿が蘇ってくる。過去、確かに存在した時間と条件反射はとても興味深いものだ。何かした合致したイメージがあると人は忘れていたことを思い出す。 素敵なことじゃないかな。
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