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FLAT 1 2 2

2002年5月結成から8年ほど活動したFLAT122は、ベースレストリオをとして休眠するまで破壊と再生を繰り返した。このバンドは私(p)と平田聡(g)の幾度にも渡る変更・改訂の複雑な重なりから編み出された作品を演奏した。分厚い譜面をガン見しながら演奏するのが定番のスタイルだった。代表的な例は「Spiral」ミニマルパート。そもそも、本作にミニマルパートなどなかった。結成(川崎隆男/p・石田和也/dr・平田聡/g)から数ヶ月リハーサル直後、平田から書き殴った譜面を渡された。そこには連続する変拍子が書かれていた。私はその拍子を元に作曲を行い、それをSpiralの挿入曲として配置したのである。しかし、彼の意図は全く違っており、その譜面は変拍子をこなしていないバンドの練習用として書かれたものと後々判明した。Spiralはこうして大きく舵を切り更に規模を拡大する。これは私が勘違いしたケースだが、当然その逆もまたある。その結果として捨てられてしまった残骸の数は呆れてしまう程だ。最後にはゲストを入れてバンドは幅を広げて、初期のシンプルな形から離れて行くが、そのコンセプトは現在のステラリージョーンズ(ギター・平田聡が率いるプログレッシブユニット)の萌芽となっていたように思う。休眠した後、私は新しいギタリストを探すために大体4年間程度奔走したが、こうした作品を弾くギタリストに巡り合うことはなかった。そこで、私はベースレストリオということで、フロントを管楽器としてライブを行ったり、先頃までFLAT122として活動した2管編成でアプローチするなど、このユニットをなんとか継続する方向でメンバー構成には拘らないのが最近の考え方だった。3作目のアルバムをピアノトリオで製作したくらいだから、私のギター離れも相当進んでいたのか?とも思う。しかし、それでもベースレスに対する拘りは燻り続け、KTG(クラリネットフロントのプログレユニット)ではベース不在時にピアノを両手でガシガシと弾いたのだが、、。その時、昔このスタイルが当たり前だったことへの驚きと(ピアニストに対する信じられないほどの負荷と、支え切らなければ音楽が止まるという恐怖!)、自分の感覚としては左手もしっかりと弾くことが自然であることが確認された。昨年2022年12月、クラリネット・筒井香織さんの主催するライブで、以前彼女から紹介のギタリスト・西村健さんと楽屋で簡単に打ち合わせから、FLAT122はオリジナルの編成・サウンドを再生することになった。この半分はセッションを兼ねていたリハーサルは先頃1月28日に行われたが、リスタートとしては十分手応えのあるものだった。あれだけギタリスト発掘には苦労したというのに、こうして活動を再開してみると実にあっけない。私のこの10年間、FLAT122活動停止から、KTG、IMAGO、Chaos & Harmony、FLAT122(ピアノトリオ・2管編成)と様々なバンドを稼働したが、その果てに降出しに戻る、とばかりに2005年結成時のFLAT122に回帰したことになる。双六のようなバンド人生である。自分の力で回帰したという実感は薄く、何かフワフワと浮遊していたものが、前触れもなく急にストンと着地した感じだろうか。

川崎隆男/p・西村健/g・田辺清貴/dr
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